和田直樹 展 「人新世」和田直樹×アープ 展 Naoki Wada Solo Exhibition Naoki Wada × Anthropological Art Project “Anthropocene”


和田直樹 展 「人新世」和田直樹×アープ 展 
Naoki Wada Solo Exhibition Naoki Wada × Anthropological Art Project “Anthropocene” 
2020 10.3 sat — 11 sun
12:00-19:00 最終日は18:00まで 
会場 wad+

 

地元である和歌山の山に入り土や石を楽しみながら集め、素材に合った焼成 方法で作品を作り上げる作家です。
今年の作品展は和田直樹としての普段の仕事と、表現の仕事として人類学 アーティスト “ アープ ” と共に「アンソロポシーン」というテーマで大阪の 南船場界隈で集めた “ ゴミを焼く ” という文化人類学的「焼きモノ」を表現し ます。ぜひ何か考えるきっかけになればと思います。
個展初日の10月3日(土)19:00よりギャラリートーク「Anthropocene」を 開催します。ぜひご参加お待ちしています。 

wad 店主 小林剛人

 

ーギャラリートーク「Anthropocene」ー

開催日時:10月3日(土)
時間:19:00-20:00 
場所: wad+
会費:¥500  (ドリンク付き) 
ご予約方法: 下記電話にてお申し込みください。

  wad  06-4708-3616

 

アンソロポシーン

アープ|Anthropological Art Project

ホモ・サピエンスとゴミ

 ホモ・サピエンスという言葉は、ラテン語で「賢い人」を意味する。この生物種はサル目ヒト科ヒト属に分類され、20~180万年前にアフリカでホモ・エレクトス(「直立する人」という意味)から分岐したとされている。現在、ヒト属に含まれる生物種はホモ・サピエンスだけであり、他の種は絶滅してしまった。
 ヒト属の大きな特徴は火をおこして、これを利用することができることにある。これはホモ・サピエンスだけではなく、ホモ・エレクトスでも同じだ。火はヒト属が活用できる食材の幅を広げた。特に、粘土を焼成して水に溶けない土器が作られるようになると食材の幅は飛躍的に広がった。人間の消化器官が受けつけないような植物性の食材を利用できるようになったからだ。火と土器はヒト属が人類として繁栄する礎となった。土器は土を焼成することで作られる。人類が化学反応を利用して最初に作った人工物である。この人工物は一度作られてしまうと元の土にはもどらない。石器は自然の石を加工したものなので、加工した矢じりを捨てても、それはただの石になるだけで物質としての性質は変わらない。食べ残しを捨てれば分解されてしまう。ところが、人工的な化学反応によって作られた土器は、捨てられても土器(それが断片だったとしても)としてずっと存在つづける。だから最初の燃えないゴミは土器だと考えていいだろう。

アンソロポシーン

 ところで、今の地球はゴミが溢れ、このゴミが一つの地層を形成するようになったと言われている。この説を唱えたのは、化学者パウル・クルッツェンと生態学者ユージン・ステルマーで、彼らは現在を人新世(アンソロポシーン)という新しい地質年代で表現するべきだとした。地質学は地層を分析することで、地球の環境が45億年の歴史の中でどのように変化してきたのかを分析する学問である。火山の噴火があれば、その痕跡が地層に現れるし、生物の死骸は化石として現れる。こうした痕跡と、地層に含まれる岩石や化石を放射年代測定することで、ある出来事が生じた地層が何億年前のものなのかを推定することができる。これが地質年代を決める基本的な方法となる。そして、従来の地質学では、現在を完新世と分類してきた。それを人新世に変更するべきだと彼らは主張する。
 45億年という気の遠くなる地球の歴史において、一つの生物種が地層を形成することなどなかった。ところが、ホモ・サピエンス(ヒト)という生物種の活動によって現実のものとなった。しかも、ホモ・サピエンスは1950年代から現在までのわずか60年ほどで地層を形成するほどのゴミを生み出した。だから、人新世という地質年代には、人類の活動が地球そのものの環境を劇的に悪化させたという意味が込められている。そして、地球の環境の悪化は、あらゆる生物の生存を脅かす。もちろん、ホモ・サピエンスも例外でない。どうやら我々は「賢い人」とは言えそうにない。

和田直樹とアンソロポシーン

 和田直樹の仕事はどこかアンソロポシーンという地質学概念と連なる。彼は山に分け入り、土や石を集めては焼成を繰り返す。物質が焼成によってどのような化学反応を示すのかを徹底的に探求する。だから、彼の作品は地層をそのまま焼成したモノ、石をむりやり焼成して溶かしたモノなど陶器という分類から逸脱する。何の役にも立たないモノ。見方を変えれば彼はホモ・サピエンスの性(さが)に従い、ひたすら燃えないゴミを生み出し続けている。だから和田直樹は決して「賢い人」ではない。だが、「賢い人」でないからこそ、彼が生み出す作品は、私たちに大切なものを気づかせる可能性をもつ。

 今回、彼とのコラボでは南船場界隈でゴミを拾い、それを焼成してみようということになった。人新世がゴミからなる世界であるなら、あえてそのゴミをホモ・サピエンスらしく焼成する。もし焼成されたモノがゴミという枠組みを越える力を持つのであれば、それは私たちが人新世に生きる一つのあり方を示すのかもしれない。そんなあられもない憶測でアンソロポシーンというプロジェクトが始まった。

 南船場界隈のゴミを拾い、山や洞窟で土を掘り、廃校に作った窯で焼く。そうすると不思議にゴミや土が今までと違ったものに見えてくる。和田直樹のレンズを通して、世界が違った見え方をする。他者のレンズを通して世界をみる。それは人類学者が調査地で体験するものそのものだ。だから、和田直樹のレンズを通して見た世界を、今度は私のレンズを通して表現してみる。二重のレンズを通して見える人新世はどのようなものなのか。そして、二重のレンズを通して見える世界を、今度は鑑賞者のレンズを通してみるとどのように映るのか。きっとたくさんの世界が生まれるだろう。世界は一つではなく、たくさん存在するはずだ。

 

アープ Anthropological Art Project
アートで人類学を「する」というコンセプトで2014年から活動を開始。
近年の展覧会
2017年4月 「遺され村の美術展」(滋賀県大津市葛川細川町)
2019年1月 「古代が創られるとき」(京都陶磁器会館)
2019年5月 「ATOM/INDO/RETNF/02115」(シカゴ大学人類学部) ほか。


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